Case565 組合の一部残業拒否闘争に対抗して会社が組合員に一切の残業をさせない措置をとったことが不当労働行為に当たるとされた事案・国・中労委(トールエクスプレスジャパン)事件・東京高判令5.4.26労判1319.139
(事案の概要)
原告会社が、不当労働行為救済命令に対して起こした取消訴訟です。
運送業を営む原告会社では、時間外手当の一部を能率手当から控除する賃金体系が採られており、本件労働組合の組合員らは会社の賃金体系が違法であるとして、会社に対して残業代請求訴訟を提起していました。
また、本件組合は、定時後に命じられる一部の残業を拒否する本件拒否闘争を開始しました。
これに対し、会社は、本件拒否闘争が終了するまで、組合員らに対し、朝に指示する集荷業務及び午後に電話で指示する集荷業務のうち、残業となる可能性のある業務をおよそ命じない本件措置をとりました。
都労委及び中労委は、本件措置が組合に対する不利益取扱い及び支配介入の不当労働行為に当たると認定しました。
(判決の要旨)
1 不利益取扱い
判決は、本件措置は、組合員に対し、一切の残業をさせずに退勤させるものであり、賃金の減少が見込まれ、実際にほとんどの組合員の賃金が低下していることから、経済的待遇上の不利益取扱いに該当するとしました。
そして、本件措置は、本件拒否闘争に対応するために必要かつ相当な範囲を超えた過剰なものであって、これを行う業務上の必要性があったとはいえないから、闘争の対象等にかかる各事実を認識しながら本件措置を実行した会社には、不当労働行為意思も認められるとし、不利益取扱いの不当労働行為に当たるとしました。
また、本件拒否闘争について、賃金体系の改定による時間外手当の増額が目的であり、会社が本件拒否闘争の対象を確認することも容易であったことなどから態様も不当であったとはいえず、正当な行為であったとしました。
2 支配介入
判決は、本件措置は、本件拒否闘争に対する対抗措置としてとられたこと、組合員への経済的な不利益が大きく、その直後に組合東京分会の組合員10名のうち7名が脱退したことによれば本件措置は組合の弱体を意図してされたものと推認され、組合の運営に対する支配介入の不当労働行為に当たるとしました。
※上告棄却・不受理により確定