【残業代】Case585 半月毎のシフト表による1か月単位の変形労働時間制の効力が否定された事案・クローバー事件・静岡地沼津支判令5.3.27労判1323.64

1 事案の概要

 原告労働者ら16名は被告会社が運営する介護施設で、施設長、訪問介護サービス提供責任者兼介護職、介護職などの職務に従事していました。被告の就業規則では休日は勤務シフトにより定めるとされ、賃金規程では職位手当に当月分の時間外労働手当、休日労働手当を含むと規定されていました。

 原告らは、適法な変形労働時間制が適用されていないにもかかわらず法定労働時間を超えて労働した時間に対する割増賃金や、職位手当が割増賃金の算定基礎に含まれるべきであることなどを主張し、未払いの残業代等の支払いを求めました。

2 判決の要旨

⑴ 変形労働時間制の適用の有無について

 裁判所は、1箇月単位の変形労働時間制が適用されるためには、就業規則等により単位期間内の各週、各日の所定労働時間を特定する必要があるとしました。本件においては、被告の就業規則の定めとシフト表の作成をもって所定労働時間の特定がされるか否かを検討しましたが、そもそも本件施設で作成されるシフト表は半月毎のものであり、単位期間(1箇月)内の各週、各日の所定労働時間を特定するものではないため、1箇月単位の変形労働時間制は適用されないと判断しました。

⑵ 職位手当の性質について

 賃金規程に職位手当に当月分の時間外労働手当、休日労働手当を含むと規定されていたとしても、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは、契約書の記載内容や使用者の説明内容、実際の勤務状況などを考慮して判断すべきであるとしました。

 そして、本件の職位手当は、施設長、副施設長、主任などの役職に応じて金額が異なり、役職が上位になるほど増額されていることから、その性質上、割増賃金の算定基礎となる賃金に含まれると判断しました。

※控訴後和解

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