【労働者性】Case616 研修医の労働者性を認めた最高裁判例・関西医科大学研修医(未払賃金)事件・最二小判平17.6.3労判893.14

研修医は労働基準法上の「労働者」に該当するのでしょうか。

【事案の概要】

原告研修医Xは、1998年4月から2000年3月まで被告Y法人が運営する大学病院の研修医として研修プログラムに参加しました。この研修は医師法に基づき実施され、研修医は教育目的であると位置づけられていました。Xは、外来診療補助、病棟での診療補助、検査、診断の実施、小手術の補助といった医療行為に従事し、指導医の指示・監督の下で患者に対する医療行為や研修指導を受けていました。勤務時間は原則として午前7時30分から午後10時ないし11時頃までと長時間に及び、土曜日も同様の勤務をしていました。大学からは、当初月額5万円、後に月額10万円の手当が支給されていました。Xは、この手当が労働の対価として不十分であるとし、最低賃金との差額分の未払賃金等を求めて提訴しました。大学側は、Xは医学生であり労働者ではないと主張していました。

【判決の要旨】

最高裁判所は、「研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるというべきである。」としました。

そして、本件病院における臨床研修のプログラムは、研修医が医療行為等に従事することを予定しており、Xは、本件病院の休診日等を除き、Y法人が定めた時間及び場所において、指導医の指示に従って、Y法人が本件病院の患者に対して提供する医療行為等に従事していたこと、Y法人は、Xに対して奨学金等として金員を支払い、給与等に当たるものとして源泉徴収まで行っていたことから、XはY法人の指揮監督の下で労務の提供をしたものとして、Xの労働者性を認めました。

そして、最低賃金との差額分の請求を認めました。

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