【使用者からの請求】Case664 労働者の不正競争防止法違反行為は認められたものの退職後2年間の競業避止義務を定める就業規則は公序良俗に反し無効とされた事案・ビットウェア元従業員ら事件・東京地判令6.9.24労判1345号56頁
【事案の概要】
原告会社Xが被告Y1(元代表取締役)及びY2(元従業員)らに対して損害賠償請求した事案です。
Xは、コンピュータのソフトウェア開発等を営む株式会社です。Yらは、Xを退職したのち、被告Y社の従業員等としてXの取引先(C社、D社等)から業務を受注しました。 Xは、以下の主張に基づき、Y1・Y2、Y社及びY3(Y社代表取締役)に対し、連帯して損害賠償を求めて提訴しました。
主位的請求(不正競争防止法違反):被告らが、Xの営業秘密(ソースコードの変更履歴等、見積情報、顧客連絡先等の「本件各情報」)を不正に使用・開示して取引先から業務を受注したことが、不競法2条1項7号等の不正競争行為に該当する。
予備的請求(競業避止義務違反):Xの就業規則には「在職中及び退職後2年間」の競業を禁止する規定(本件競業禁止規定)があるところ、被告らが共謀してXの在職中および退職後に取引先から業務を受注した行為が、共同不法行為等に該当する。
【判決の要旨】
裁判所は、主位的請求(不競法違反)については、D社に対する営業秘密(監査アプリのサブバージョンの記録)の不正使用を認め、被告らに対し連帯して121万5500円の損害賠償を命じました。また、予備的請求(競業避止義務違反)については、C社等に対する被告Y1・BY2の「在職中」の競業行為(共同不法行為)を認め、被告らに対し連帯して229万5946円の損害賠償を命じました
一方、退職後の競業避止義務については公序良俗に反し無効と判断しました。
裁判所は、使用者と労働者の間に、労働者の退職後の競業避止義務を定める合意があり、それが使用者の正当な利益の保護を目的とするものであったとしても、何人にも職業選択の自由が保障されていること(憲法22条 1 項)からすれば、労働者の契約期間中の地位、競業が禁止される業務、期間、地域の範囲、雇用者等による代償措置の有無等の諸事情を考慮し、その合意が合理性を欠き、労働者の上記自由を不当に害するものであると認められる場合には、公序良俗に反するものとして無効となると解すべきであるとし、本件規定は、職種や態様を問わず広範に競業企業への関与を禁止しており、期間が2年と長く、地域の限定もなく、代償措置も存在しないため、労働者の職業選択の自由を不当に害するものとして公序良俗に反し無効としました。
※控訴

