Case68 派遣先が労組法上の使用者に当たるとした最高裁判例・朝日放送事件・最判平7.2.28労判668.11【百選10版4】
(事案の概要)
テレビ局を運営する原告会社の請負先から原告会社に派遣されている労働者が加入する労働組合(本件組合)が、賃上げ等を求め原告会社に団体交渉を求めましたが、原告会社は使用者でないことを理由に団体交渉を拒否しました。
本件組合は、労働委員会に不当労働行為救済申立てを行い、大阪府労働委員会及び中央労働委員会は原告会社に対して、使用者でないことを理由に団体交渉を拒否してはならないとの救済命令を発しました。
本件は、原告会社が中央労働委員会命令の取消しを求めた取消訴訟です。
(判決の要旨)
一審判決
一審は、原告会社の請求を棄却しました。
控訴審判決
控訴審は、原告会社の控訴を認め、中央労働委員会命令を取り消しました。
上告審判決
最高裁は、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、労働組合法上の使用者に当たるとしました。
そのうえ、原告会社は、実質的に見て、請負先から派遣される従業員の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等を決定しており、従業員の基本的な労働条件等について、雇用主である請負先と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとして、その限りにおいて労働組合法上の労働者に当たるとしました。