Case141 休職期間を延長し試し出勤中の労働者の勤務状況から少なくとも相当の期間内に通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込まれる状況にあったとした事案・綜企画設計事件・東京地判平28.9.28労判1189.84
(事案の概要)
被告会社において建築設計技師として勤務していた原告労働者は、うつ病により休職し、平成24年3月8日をもって休職期間満了の予定でしたが、会社は原告に対して、復職可能かの審査を行う期間として3か月のリハビリ勤務(試し出勤)を命じ、原告は同月13日から出勤しました。
会社は、リハビリ勤務後の平成24年6月11日、原告に対して解雇通知書と題する書面を交付し同日付で原告を解雇する旨を通知しましたが、同通知には休職期間満了による自然退職を定めた就業規則が引用されていました。
原告は、リハビリ勤務開始時に既に復職していたことや、会社による退職扱いないし解雇が無効であることを主張し、雇用契約上の地位の確認や賃金の支払いを求めました。
(判決の要旨)
1 リハビリ勤務の性質
判決は、通知書に、試し出勤は復職可能かの審査を行う期間であると記載されていることや、就業規則上も休職期間は延長することもあり、復職させる場合には別に定める職場復帰支援プランを用いると定められていること等から、会社がリハビリ勤務を命じたのは休職期間を延長する意思であったものであるとし、試し出勤の開始をもって原告が復職したとはいえないとしました。
2 復職の可否
判決は、休職原因がうつ病等の精神的不調にある場合において、一定程度の改善をみた労働者について、いわゆるリハビリ的な勤務を実施した上で休職原因が消滅したか否かを判断するに当たっては、当該労働者の勤怠や職務遂行状況が雇用契約上の債務の本旨に従い従前の職務を通常程度に行うことができるか否かのみならず、当該労働者の能力、経験、地位、その精神的不調の回復の程度等を勘案し、相当の期間内に作業遂行能力が通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込める場合であるか否かについても検討することを要し、その際には、休職原因となった精神的不調の内容、現状における回復程度ないし回復可能性、職務に与える影響などについて、医学的な見地から検討することが重要になるとしました。
そして、試し出勤中の原告の勤務状態などからして、原告は少なくとも相当の期間内に通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込まれる状況にあったとして、解雇及び退職扱いを無効としました。
【プラスα(解雇通知書の意味)】
判決は、会社の意思としては、解雇であれ休職期間満了による退職措置の通知であれ、とにかく原告の労働契約上の地位を失わせるという意思があったものと理解するのが合理的であり、解雇通知書は、解雇の意思表示をしたものであるとともに、休職期間満了による退職の措置を通知したものであるとしました。
※控訴後和解