Case164 組合が守秘義務条項などに同意することを団体交渉開催の条件とすることが正当な理由のない団交拒否に当たるとした事案・ 国・中労委(アート警備)事件・東京高判令2.8.20労判1262.37

(事案の概要)

 会社が提起した、不当労働行為救済命令に対する取消訴訟です。

 本件労働組合は、原告会社に対して3度の団体交渉を申し入れました。しかし、会社は、組合が①団体交渉の内容その他団体交渉に関する情報の一切を秘密として保持し、正当な理由なく第三者に開示または漏えいしないこと(守秘義務条項)、②団体交渉において録音および撮影のいずれもおこなわないこと(録音撮影禁止条項)、③団体交渉当日は会社代理人弁護士の議事進行に従うこと(議事進行条件)の団交3条件に同意することを条件に団体交渉を開催する旨回答したため、団体交渉は開催されませんでした。

 組合は、会社の対応が不当労働行為(正当な理由のない団交拒否)であるとして労働委員会に不当労働行為救済申立をし、埼玉県労働委員会及び中央労働委員会は、会社の対応が不当労働行為であると認めていました。

(判決の要旨)

 判決は、一方当事者が、一定の条件が充たされない限り団体交渉の開催を拒否するとの態度に出た場合、開催条件に固執した者が団体交渉を拒否したとみられることもあり得るとしました。

 そして、開催条件に固執してされた団体交渉拒否について労組法7条2号の正当な理由があるといえるか否かは、団体交渉開催の条件等の内容が、労使関係について労使対等の立場で合意により形成するという団体交渉の目的に照らして必要性が認められるか否か、条件等の内容それ自体が円滑な団体交渉実施等の観点に照らして合理的な内容か否か、当該条件等の内容が団体交渉の他方当事者の利益を不当に害するものか否かなどの事情を総合して、当該条件等の必要性、合理性等が認められない場合には、団体交渉拒否は正当な理由がないというべきであるとしました。

 そのうえで、会社と組合の団体交渉開催に当たり、団交3条件を要求する必要性及び合理性は認められないとして、会社の団交拒否は正当な理由がなく、不当労働行為に該当するとしました。

※上告棄却・不受理により確定

Follow me!