Case31 部下がメモをとることを制限したこと等がパワハラと認められた事案・長崎県ほか(非常勤職員)事件・長崎地判令3.8.25労判1251.5

(事案の概要)

 長崎県の非常勤職員として任用された原告(女性)が、配属先の直属の上司(男性)から度重なるセクハラ及びパワハラを受け、適応障害を発症して労務提供が不能になったと主張して、長崎県及び上司に対して損害賠償(予備的に国家賠償)や労務不能後の賃金の支払いを求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、原告がセクハラと主張する事実について、上司が業務上の必要性がないときにことさらに原告に接近したり、身体的接触を図ったりしたとは認められないとした上、業務上の必要性があるときに、至近距離に接近することや、パソコン操作をした際に手が当たり、腕が胸に触れたとして、そのことが、平均的女性労働者を基準として、性的不快感をあたえるものとして、違法であるとまではいえないなどとし、被告らの責任を否定しました。

 一方、原告がパワハラと主張する事実について、上司が原告に対してメモをとることを制限したことは、合理的な理由なく原告の業務習熟を妨げるものであり、違法としました。また、上司の、パワハラを訴え退職しようとする原告に対する「俺の何が気に食わないのか、逃げるのか、俺に対して失礼だと思わないのか。」という発言が、社会通念に反し違法であるとしました。

 判決は、国家賠償として長崎県に対して慰謝料30万円の支払を命じました。公務員である上司個人の責任は否定されました。

※確定

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