Case33 労災事故の約2年後に発症した精神障害も労災と認められた事案・国・一宮労基署長(ティーエヌ製作所)事件・名古屋高判令3.4.28労判1251.46

(事案の概要)

 精神障害の労災不支給決定及び一部不支給決定に対する取消訴訟です。

 原告は、平成24年10月に業務中に頭部を機械に挟まれる事故(本件事故)により、左眼眼球破裂等の傷害を負い、平成28年には、左眼につき光覚弁(明暗の分別ができる程度の状態)で症状固定し、労災保険上の障害補償一時金の支給決定を受けました。

 原告は、平成26年11月に心因反応(神経性症うつ病)の病名で、これが本件事故による左眼失明に基づく二次的な非器質性障害である旨の診断を、平成28年6月には心因反応がPTSDに該当する旨の診断を受けました。

 原告は、労災保険給付として、①平成26年6月から同年10月までの期間、左眼の負傷の療養のため労働することができないことを理由とした休業補償給付、②心因反応(神経症性うつ病)を理由とした療養補償給付、③28年3月から平成29年3月までの期間、心因反応(PTSD)の療養のため労働することができないことを理由とした休業補償給付の支給を請求し、労基署は、①につき通院日のみ休業補償給付を支給し、その余は不支給とする旨の処分、②及び③につき不支給決定をしました。

(判決の要旨)

 一審判決は、②~③につき、本件事故がPTSD発症の原因となり得る心的外傷的出来事であったと認めつつ、平成26年10月までの時点で原告がPTSDを発症したと認めることはできず、原告は、左眼の症状の苦痛というよりは、専ら休業補償の終了によって自らの経済生活が立ち行かなくなることに対する不安から精神状態を改めて悪化させており、平成26年10月に新たに発症していた精神障害は適応障害であったとしました。そして、原告の発病日は本件事故の約2年後であること、原告の視力は社会復帰が困難な状態であったとは認められないことなどから、業務関連性を否定しました。

 また、①につき、原告が片眼視力による業務を行うことが可能であったとして、通院日以外の日について労働することができない状態であったとは認められないとして、原告の請求をいずれも棄却しました。

 高裁判決は、②~③につき、一審と同様原告が平成26年10月に適応障害を発症していたとしましたが、6か月より前に発生した出来事が原因で精神障害を発症し業務上と認められる場合もあるとしたうえ、原告が以前のような仕事を続けることは不可能となるような左眼の負傷をしたこと、左眼の症状が増悪し、眼内の状態が非常に悪くなっていたこと等から、適応障害の業務起因性を認め、不支給決定を取り消しました。

 ①については一審判決が維持されました。

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