Case56 過労自殺につき会社と社長の不法行為責任が認められた事案・日和住設ほか事件・札幌地判令3.6.25労判1253.93

※本件は控訴審において遺族らと会社らとの間で和解が成立したことにより終結しているようです。

(事案の概要)

 過労自殺に関する会社及び社長に対する損害賠償事案です。

 被災者は、約5か月間被告会社で暖房設備工事の業務に従事し、被告会社を退職した約4か月後に自殺しました。被告会社では、三六協定を締結しておらず、職務給に月106時間の時間外手当を含むとされており、被災者は、被告会社を退職する直前の3カ月間連続で月100時間以上の時間外労働に従事していました。

 労基署は、被告会社の業務により被災者が精神障害を発症し自殺に至ったとして、遺族補償年金等の労災保険給付の支給決定をしました。

 本件は、被災者の遺族が、被災者の死亡に関して、被告会社及び被告社長に対して損害賠償を求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、被災者が長時間労働等の業務上の心理的負荷によりうつ病を発症し、これにより自殺に至ったとしました。

 また、被告会社及び被告社長について、三六協定を締結しないまま、106時間の時間外労働が生じることを想定して、当該時間に相当する固定残業代に係る賃金体系を割増時間外手当と職務給に対応する部分の区別のできない形で採用し、そもそも労働者の労働時間を抑制するための制度を構築していなかった、被災者の拘束時間や時間外労働時間について集計せず、業務の過重性を軽減する措置を講じなかったなどとして、被告会社と被告社長の不法行為責任(709条。連帯責任。)を認めました。

 さらに、逸失利益の算定にあたり、被告会社の業務の繁閑や同種の現場作業員の就業実態から、1年のうち、8月から12月までの5か月間については月45時間の時間外労働を行う蓋然性があるとし、これに相当する残業代を逸失利益に加えました。

※本件は控訴審において遺族らと会社らとの間で和解が成立したことにより終結しているようです。

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