Case126 頸肩腕障害の再発可能性を理由とする休職命令について就業規則上の休職事由を厳格に解釈したうえ無効とした事案・富国生命保険(第三回休職命令)事件・東京地八王子支判平7.7.26労判684.42

(事案の概要)

 原告労働者は、頸肩腕障害にり患し一時期傷病欠勤していましたが、復職し通常業務を行っていました。その後、原告が、再燃防止のために衣服、椅子について配慮すべきとの診断書を被告会社に提出したところ、会社は、頸肩腕障害の再発の可能性があるとして、就業規則上の休職事由⑸「本人の帰責事由により業務上必要な資格を失うなど、当該業務に従事させることが不適当と認めた場合」、休職事由⑹「その他前各号に準ずるやむを得ない場合」を根拠に、原告に対して6か月間の第一回休職命令、続く1年間の第二回休職命令、更に1年間の第三回休職命令を発しました。なお、被告の就業規則には傷病による休職事由⑴「傷病欠勤が引き続き……条の期間以上に渡った場合」が挙げられていました。

 原告は、各休職命令に対してそれぞれ無効確認、賃金支払いを求める訴訟を提起しました。本件は、第三回休職命令に対する無効確認、賃金支払い等請求事件です。

(判決の要旨)

 判決は、休職事由⑸について、頸肩腕障害の増悪可能性は原告に帰責できるものではないとして休職事由に該当しないとしました。

また、休職事由⑹について、被告においては傷病によって欠勤するときは、まず傷病欠勤の扱いをし、傷病欠勤の期間内に治癒しないときに初めて傷病休職を命ずるものとされていること、休職命令は休職中の労働者に退職金の額や定期昇給等につき具体的な不利益を与えるものであることを併せ考えると、休職事由⑹に該当するというためには、休職事由⑴の場合と実質的に同視できる程度に通常勤務を行うことに相当程度の支障をきたす必要があるとしたうえ、原告の症状が通常勤務に相当程度の支障をきたすほどのものであったということはできないとして、休職命令の無効確認及び賃金支払いを認めました。

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