Case131 職務発明に対する「相当な対価」の額をあらかじめ確定的に定めることはできないとした最高裁判例・オリンパス光学工業事件・最判平15.4.22労判846.5【百選10版30】
(事案の概要)
原告労働者は、被告会社の研究開発部に所属しビデオディスク装置の研究開発に従事し、「ピックアップ装置」という特許法35条1項の職務発明に当たる本件発明をしました。
会社では、社内規則において、従業員の特許を受ける権利が会社に承継されること、職務発明につき会社が第三者から工業所有権収入を継続的に受領した場合に従業員に対して上限額を100万円とする1回限りの工業所有権収入取得時報償を行うことを定めていました。会社は、原告に対して出願補償として3000円、登録補償として8000円、工業所有権収入取得時報償として20万円を支払いました。
本件は、原告が会社に対して、「相当の対価」(特許法35条4項)として約5000万円の報償金の支払いを求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、使用者は、就業規則等により従業者の職務発明についての特許を受ける権利等の使用者への承継、対価の支払い、額、支払時期等を定めることができるが、職務発明や特許権の承継が具体化する以前にあらかじめ対価の額を確定的に定めることはできず、従業員は、就業規則等に定められた対価の額が「相当な対価」の額を下回るときは不足額を請求する権利があるとしました。
そして、一審及び控訴審判決を維持し、会社が本件発明によって受けるべき利益額を5000万円、会社の貢献度を95%、原告の貢献度を5%としたうえ、「相当な対価」を250万円とし、既払い金との差額228万9000円の支払いを認めました。