Case146 使用者が誤った休職期間を通知したことや傷病を理由とする解雇に先立ち主治医の意見を聞かなかった不備があることから解雇が無効とされた事案・J学園(うつ病・解雇)事件・東京地判平22.3.24労判1008.35
(事案の概要)
被告法人で教員として勤務していた原告労働者は、うつ病を発症して平成18年9月から休職しました。休職中、法人は原告に対して休職期間は1年以内であると通知しましたが、法人の就業規則には「業務外の傷病により欠勤が引き続き90日を経過した」場合の休職期間は1年以内と定められていました。
原告は平成19年6月に一度復職しましたが、数日出勤したのち欠勤・入院し再度休職しました。
原告は、法人から休職期間は1年以内であると説明されていたことから、主治医が時期尚早とするなか平成19年9月に復職しましたが、欠勤を繰り返していました。
法人は、原告に退職勧奨したうえ、平成20年3月に「心身の故障のため職務の遂行に支障があり、又はこれにこたえられないとき」の解雇理由に該当するとして原告を解雇しました。
本件は、原告が解雇の無効を主張して雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。
原告はうつ病の業務起因性も主張しましたが否定されました。
(判決の要旨)
判決は、法人が原告に対して休職期間は1年以内(平成19年9月まで)と説明したことは、就業規則の解釈を誤ったものであり、休職の前提となる「引き続き90日」の欠勤を加えると原告の休職期間は平成19年12月までのはずであったとしました。
そして、被告が就業規則の解釈を誤らなければ復職時期を3か月先まで伸ばせたはずであること等から、原告には回復可能性が認められるとしました。
また、法人の人事担当が、原告の退職の当否等を検討するにあたり、原告の主治医に対して一度も問い合わせ等をしなかったことは、現代のメンタルヘルス対策の在り方として、不備なものであると言わざるを得ないとしました。
以上より、判決は、法人は原告に対して休職期間について誤った通知をしたうえ原告に回復可能性が認められるにもかかわらず、メンタルヘルス対策の不備もあって回復可能性がないものと断定したものであるとし、本件解雇はやや性急なものであったと言わざるを得ず、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないとして無効であるとしました。
※控訴