Case162 完全予約制の美容院にて予約が入っていない時間に従業員が業務を行っていない時間が相当程度あるからといって労働から解放されていたとは言えないとした事案・ルーチェほか事件・東京地判令2.9.17労判1262.73
(事案の概要)
美容師である原告労働者は、被告会社の経営する美容院で働いていました。原告と会社との雇用契約は月給制であるものの所定労働時間や休憩時間は定められておらず、原告は店舗の営業時間に勤務していました。
原告は会社に対して残業代を請求しましたが、会社は、本件店舗は完全予約制であるため、予約が入っていない時間はほぼすべて休憩時間であると主張しました。
また、原告は、客が原告に対してドライヤーが熱い旨の苦情を述べたことから、被告代表者が原告に対して「熱さを自分で感じてみろ。」と述べてドライヤーの熱風を浴びせたことや被告代表者の原告に対する発言などについて慰謝料の支払いを求めました。
(判決の要旨)
1 残業代請求
判決は、来客がない時間には原告が実際に業務をしていない時間が相当程度あったとしても、直ちに労働からの解放が保障されていたとはいえないとして、来客がない時間は全て休憩時間であるという会社の主張を退け、原告の労働時間及び休憩時間を具体的に認定しました。
そして、雇用契約上所定労働時間の定めがないことから、法定労働時間である1日8時間、週44時間(労基法40条)を所定労働時間として割増賃金を計算しました。
さらに、会社は従業員の労働時間管理を一切行っておらず、割増賃金不払いは悪質であるとして、会社に割増賃金と同額の付加金の支払いを命じました。
2 慰謝料請求
判決は、被告代表者が原告に対してドライヤーの熱風を浴びせた行為につき慰謝料3万円を、その他の被告代表者の原告に対する発言につき慰謝料5万円を認めました。
※控訴