Case169 戸締り報告書、警備記録、同僚の証言等から月100時間超の時間外労働を認定し自殺の業務起因性を認めた事案・ 国・出雲労基署長(ウシオ)事件・松江地判令3.5.31労判1263.62

(事案の概要)

 労災不支給決定に対する取消訴訟です。

 本件労働者は、スーパーマーケットを経営する本件会社でバイヤーとして勤務していました。本件労働者は、長時間の時間外労働を行っていましたが、タイムカード、出勤簿、業務日報、予定表、パソコンなどの客観的証拠はありませんでした。

 また、本件労働者は、精神科等へ通院していませんでした。

 本件労働者は、平成21年9月18日に自殺しました。

 本件労働者の両親である原告らは、本件労働者が長時間労働等により精神疾患を発症して自殺に至ったとして、出雲労基署に対して労災保険法上の遺族補償給付を請求しましたが、出雲労基署長は、本件労働者の死亡は業務上の事由によるものとは認められないとして、不支給決定をし、審査請求及び再審査請求も棄却されました。

(判決の要旨)

 判決は、家族や同僚らの証言に基づき、ICD-10におけるうつ病エピソードの診断基準に則り発病の有無を検討し、死亡時には重度のうつ病エピソードを発症していたと認定しました。

 また、戸締り報告書、警備記録、同僚の証言等から本件労働者の労働時間を推測し、本件労働者の死亡直前6か月間に月約113時間~138時間の時間外労働を認定し、業務による心理的負荷の強度を「強」とし、業務起因性を認め労災不支給決定を取り消しました。

※確定

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