Case234 元代表取締役の労働者に対する言動による精神疾患発症について業務起因性及び会社の安全配慮義務違反が認められた事案・葵宝石事件・東京地判令4.2.17
(事案の概要)
原告労働者は、被告会社の事務所で勤務していました。原告は、事務所に居住する元代表取締役Aから、買物等の日常的な雑務を行うよう指示され、指示に従わなければ解雇する旨や、早朝からの出勤を求められる等の言動を繰り返し受けていました。Aは、不機嫌で攻撃的になり、原告を叩くなどの暴行を行うこともありました。
原告は、会社の代表取締役Bに対して、Aへの対応を繰り返し求めていましたが、特段の対応はとられませんでした。
原告は、Aからこのような行為を約5年間受け、精神疾患を発症し休職し、休職期間満了により退職扱いとなりました。
本件は、原告が会社に対して、精神疾患の業務起因性を主張して、雇用契約上の地位の確認や、安全配慮義務違反に基づく損害賠償等を求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、Aの言動は、原告に対して強い心理的負荷を与えるものであり、会社の対応も原告の心理的負荷を強めるものであったとして、精神疾患の業務起因性を肯定し、雇用契約上の地位を認めました。
また、会社は、原告とAとの接触の機会を減らすなどして原告の就業環境を改善するための措置をとるべき義務を負っていたとして、会社の安全配慮義務違反を肯定し、休業損害や慰謝料314万円の支払いを認めました。