Case244 所長が窃盗行為を行ったかのように記載した労働組合の壁新聞の違法性が否定された事案・京阪バス会(京阪バス)事件・京都地判令4.3.30労判1273.25

(事案の概要)

 原告会社及び原告所長が、被告労働組合の壁新聞が名誉毀損に当たるとして損害賠償請求した事案です。

 会社では、運転手は運転業務中に財布や携帯電話を貴重品ロッカーに保管することとされていました。会社による運転手の添乗査察の際、査察員が、バス運転手の胸ポケットのふくらみを見て携帯電話がポケットに入っている旨コメントしたため、原告所長が当該運転手に無断で貴重品ロッカーを確認しました(本件行為)。当該運転手のポケットに入っていたのはメガネケースでした。

 組合は、本件行為が窃盗の可能性があるものであると抗議し、本件壁新聞に①「窃盗に値する行為」②「窃盗の可能性もある所長に対する賞罰委員会を開催するのか回答ください」③「あなたは営業前にロッカーに入れる財布の全金額を確認してから入れますか」④「入庫したあなたが管理職である所長からロッカーを開けられたことを告げられて財布を確認させられ『全金額はあると思う』と答えませんか」⑤「本当に盗難の事実は無かったと言えるのでしょうか」⑥「管理職である所長があなたのロッカーを開けていた事実を知ったとき」などと記載していました。

(判決の要旨)

 判決は、本件壁新聞の記載は、所長がロッカー内の財布から現金を盗んだかの様な印象を読み手に与えるものであり、原告らの社会的評価を低下させるものであるものの、他人のロッカーを権限なく解錠してその中を改めるという行為は客観的には窃盗行為そのものであり、窃盗に値する行為と言われてもやむを得ないものであり、本件壁新聞の論旨は所長に対する懲戒処分が行われるべきものであるというものであるから、所長に対する人身攻撃とはいえず、意見としての域を逸脱したものとはいえないから違法性を欠くとし、原告らの請求を棄却しました。

※確定

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