Case269 乗務員の待機場所間違いにより生じた2分の遅れに対する賃金控除を無効とし2分間分の賃金請求権を認めた事案・JR西日本(岡山支社)事件・岡山地判令4.4.19労判1275.61
(事案の概要)
運転士である原告労働者は、回送列車を移動させる作業を行う際、待機すべきホームの番線を間違えたため、被告会社から指定された時刻より2分遅れて作業を開始し、1分遅れてその後の作業を完了しました。
会社は、作業が遅れた2分間は勤務を欠いたものであるとして、2分間分の賃金を控除しました(1分間分は後に返還しました。)。
本件は、原告が会社に対し、控除された賃金56円の支払いを求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、労働者が債務の本旨に従った労務の提供をしていない場合であっても、使用者が当該労務の受領を拒絶することなくこれを受領している場合には、使用者の指揮命令に服している時間として、賃金請求権が発生するとして、会社が原告の2分間の労務を受領したといえるかを検討しました。
そして、労務の提供が人間の活動である以上、一定の割合で、その遂行過程の一部に過失による誤りや遅れ等が生じ得ることは、会社においても通常想定されるものであること、乗務員は、指示された業務を遂行する過程で誤りや遅れ等を生じさせた場合に、それを修正するための労務も含めて、業務の遂行に向けた一連の労務を行っており、その間、会社の指揮命令に服しているのであって、会社においてそのような労務を受領していないということはできないとして、原告の請求を認めました。
※確定