Case323 トラック運転手からラーメン店の店長候補に配置転換された労働者について精神疾患発症の業務起因性を認めた事案・国・笠岡労働基準監督署長事件・岡山地判令4.3.30労経速2508.8
(事案の概要)
労災不支給決定に対する取消訴訟です。
原告労働者は、会社でトラック運転手として配送業務をしていましたが、会社が経営するラーメン店の店長候補に配置転換されました。
原告は、慣れない業務を行う中でおおむね月80時間程度(多いときには月100時間程度)の時間外労働をし、業務上のミスを上司から度々叱責されるなどしました。
原告は、当初は会社から配送業務に戻れる旨の説明を受けていましたが、後に配送業務への復帰を否定され店長になれるよう頑張るしかなくなりました。
その後、原告は精神疾患を発症し、労災申請しましたが不支給決定がなされ、再審査請求も棄却されました。
(判決の要旨)
判決は、本件配置転換について、内容的にも質的にも過去に経験した業務と全く質の異なる業務への異動であり、原告は客観的に相応に重い責任を負うべき立場になり、長時間の時間外労働が生じるようになったとして、本件配置転換の心理的負荷の強度は「強」ないし「強に近い中」であったとしました。
また、本件配置転換は精神疾患発症の約8か月以上前の出来事でしたが、その後店長になれるよう頑張るしかなくなったことは達成困難なノルマが課されたのと類似し、その心理的負荷の強度は「強」ないし「強に近い中」であり、当該出来事と本件配置転換は一連の出来事として評価するのが相当であるとしました。
そして、上司から受けた叱責に心理的負荷の強度が「中」のものもあり、総合評価すると原告の業務による心理的負荷の強度は「強」に至っていたとし、業務起因性を認めて労災不支給決定を取り消しました。