Case339 公立高校教員について超勤4項目以外の部活動の時間等も含めて業務の量的過重性を評価すべきであるとして校長の安全配慮義務違反を認めた事案・大阪府(府立高校教員)事件・大阪地判令4.6.28労判1307.17

(事案の概要)

 本件は、被告大阪府が設置する高校に教員として勤務していた原告労働者が、長時間労働により適応障害を発症したとして、大阪府に対して国家賠償請求した事案です。

 原告は、授業の他に、生徒会部に所属したほか卓球部及びラグビー部の顧問として休日にも生徒を指導していました。また、国際交流委員会の委員としてオーストラリア語学研修の準備も行っており、これらを含む労働時間は、発症前2か月間が1か月当たり概ね120時間程度、発症前6か月間の平均が1か月当たり概ね100時間程度となっていました。その直後に適応障害を発症し、公務災害と認められていました。   

 発症の2か月ほど前からは、原告は、校長に対して、繰り返し「心身共にボロボロです」「体調が悪いです。いっぱいいっぱいです。」「適正な労務管理をしてください。あまりにも偏りすぎている。」「このままでは死んでしまう。」「もう限界です。」などと訴えていましたが、校長は身体を気遣い休むようになどの声掛けをするのみで、業務負担軽減措置を講じませんでした。

(判決の要旨)

 判決は、その雇用する労働者の業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し、業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の当該注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきであることは、地方公共団体と、その設置する学校に勤務する地方公務員との間においても別意に解すべき理由はないとしました。

 また、本件高校の校長は、原告ら教員に対し、労働時間の管理のなかで、その勤務内容、態様が生命や健康を害するような状態であることを認識、予見し得た場合には、事務の分配等を適正にする等して勤務により健康を害することがないよう配慮すべき安全配慮義務を負うとしました。

 大阪府は、公立高校の教員職員については、時間外勤務を命じることができるのは政令により規定される超勤4項目に限られるところ、原告の時間外勤務は校長からの時間外勤務命令に基づくものではなく、労基法上の労働時間と同視することはできないと主張しました。判決は、大阪府の「勤務時間の適正な把握のための手続等に関する要綱」や文科省の「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」では超勤4項目以外の業務を行う時間も含めて勤務時間を把握するものとされていたことなどから、安全配慮義務の履行の判断に際しては、時間外勤務時間をもって業務の量的加重性を評価するのが相当であり、本件時間外勤務時間が、校長による時間外勤務命令に基づくものではなく、労基法上の労働時間と同視することができないことをもって、左右されるものではないとしました。

 そして、校長が、原告よりその追い詰められた精神状態を窺わせるメールを受信しながら、漫然と身体を気遣い休むように等の声掛け等をするのみで、抜本的な業務負担軽減策を講じなかった結果、原告は本件発症に至ったものと認められ、校長には安全配慮義務違反が認められるとして、大阪府に賠償を命じました。

※確定

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