Case354 給与体系等が異なる管理職の等級から非管理職の等級への降級につき管理職の等級の地位にあることの確認が認められた事案・マッキャンエリクソン事件・東京高判平19.2.22労判937.175

(事案の概要)

 原告労働者は、広告代理店である被告会社で勤務していました。

 被告では、成果主義賃金体系を基礎とする新賃金規程が導入され、給与等級7級以上は管理職、給与等級6級以下は非管理職とされ、原告は給与等級7級に格付けされました。

 新賃金規程では「評価の結果、本人の顕在能力と業績が、属する資格(=給与等級)に期待されるものと比べて著しく劣っていると判断した際には、資格(=給与等級)と、それに応じて処遇を下げることもあり得ます。」と規定されていました。

 また、従業員に公開されていない被告の内規では、-3~+3の7段階の評価のうち、-1の評価を2年連続で受けた者及び-2の評価を受けた者が降級の対象者となり、昇格会議で降級を決定するとされていました。

 原告は、2001年度評価が-1、2002年度評価が-2であったとして、給与等級7級から6級に降級されました。

 本件は、原告が会社に対して、降級の無効を主張し、給与等級7級の地位にあることの確認や差額賃金の支払いを求めた事案です。

(判決の要旨)

1 確認の利益

 判決は、給与等級7級は管理職であるのに対して6級は非管理職であり、給与体系が異なること、賞与の受給時期や退職金計算も異なることなどから、給与等級7級の地位にあることの確認は、単に差額賃金だけを決める指標にとどまらず、より広い会社における待遇上の階級をも表す地位の確認を求めていると解することができるとして、確認の利益を認めました。

2 降級の有効性

 判決は、会社が新賃金規程の下で従業員に対して降級を行うには、その根拠となる具体的事実による根拠に基づき、本人の顕在能力と業績が、本人が属する給与等級に期待されるものと比べて著しく劣っていると判断することができることを要するとし、降級の内規に該当したからといって直ちに新賃金規程の降級基準に該当するということはできないとしました。

 そして、降級の理由について具体的な立証がないとして、降級を無効とし、給与等級7級の労働契約上の地位を有することの確認及び差額賃金の支払いを認めました。

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