Case345 運行時間外手当の固定残業代性を否定し、これを有効として給付基礎日額を算定した労災支給決定を取り消した事案・国・所沢労基署長(埼九運輸)事件・東京地判令4.1.18労判1285.81
(事案の概要)
原告労働者は、本件会社における月平均約100時間を超える長時間労働が原因で狭心症を発症しました。労基署は、原告の狭心症の発症につき労災支給決定をし、給付基礎日額を増額する変更決定をして改めて支給決定(本件処分)を行いました。
本件は、原告が、本件処分において固定残業代を有効として給付基礎日額を算定した点になお誤りがあるとして、本件処分の取消しを求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、雇用契約書や就業規則上は運行時間外手当は法定外時間外勤務の対価として支払われていたとしつつ、基本給と運行時間外手当の金額の比率及び基本給の1時間当たりの単価、運行時間外手当に見合う法定外時間外労働時間数、基本給の増額と運行時間外手当の減額の経緯等の事情を考慮すれば、本件会社が原告に対して支払った運行時間外手当には、法定外時間外勤務に対する対価以外のものを相当程度含んでいるものとみるのが相当であるとしました。
そして、運行時間外手当のうちどの部分が法定外時間外勤務に対する対価に当たるかは明らかでないから、運行時間外手当のうち、通常の労働時間の賃金に当たる部分と労基法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することはできないとして、本件雇用契約において運行時間外手当が法定外時間外勤務の対価として支払われていたとはいえないとし、運行時間外手当を固定残業代として有効であるとして給付基礎日額を定めた本件処分を取り消しました。
※確定