Case387 使用者が存在を認識しながら懲戒理由として表示しなかった非違行為を後に懲戒事由として主張することは原則として許されないとされた事案・ヒューマントラスト(懲戒解雇)事件・東京地判平24.3.13労判1050.48

(事案の概要)

 原告労働者は、競合他社の情報システム構築等の支援を行い、被告会社の機密情報等を不正に社外に持ち出した等の理由で懲戒解雇されました。

 本件は、原告が会社に対して、懲戒解雇の無効を主張して雇用契約上の地位確認等を求めた事案です。

 会社は、訴訟において懲戒解雇事由を追加しており、懲戒解雇事由の追加の可否も争点となりました。

(判決の要旨)

 判決は、使用者が懲戒当時に存在を認識しながら懲戒理由として表示しなかった非違行為について、それが懲戒理由とされた他の非違行為と密接に関連した同種の非違行為であるなどの特段の事情がない限り、使用者があえて懲戒理由から外したことが明らかであるから、後にこれを懲戒事由として主張することはできないとし、一部の懲戒解雇事由の追加を認めませんでした。

 もっとも、結論としては懲戒解雇が有効とされました。

 なお、原告に対する人事異動に伴う賃金減額が無効とされ未払い賃金請求が一部認められています。

※控訴

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