Case398 解雇か謝罪して賃上げ交渉を白紙にするかの選択を迫られた労働者が「もういいですよ。」などと述べたことをもって退職の合意があったとはいえないとした事案・新日本建設運輸事件・東京高判令2.1.30労判1239.77
(事案の概要)
原告労働者らは、被告会社と賃上げ等の交渉をしていました。
交渉の場において、被告代表者は、原告らに対して、解雇通知書を示しながら、解雇通知書を取るのか、それとも過去の問題行動等を謝罪するとともに、交渉を全て白紙に戻すのかのいずれかを選択するよう求められました。原告らは、「もういいよ。話にならないよ。」「もういいですよ。」などと述べて解雇通知書を手に取り退室しました。
本件では、当該やりとりが退職の合意なのか解雇なのかが争点となりました。
(判決の要旨)
判決は、原告らの「もういいですよ。」等の発言は、解雇通知書を取るのか、それともこれまでの行動を謝罪するとともに、これまでの交渉を白紙に戻すかのいずれかの選択を求めた被告代表者の意思が固いことを認識し、それ以上の交渉を断念したことによりされた発言であり、当該発言をもって退職を了承した趣旨であると解することはできないとして、原告らが解雇通知書を手に取り部屋を出た時点で、会社による確定的な解雇の意思表示があったものとしました。
そして、解雇を無効として雇用契約上の地位確認等を認めました。
一審は、原告らが解雇後に再就職したことを理由に一定の時点で就労意思を喪失し退職の黙示の合意が成立したとしましたが、控訴審は控訴した原告について就労意思の喪失を否定し、判決確定までのバックペイを認めました。
※確定