Case401 造船不況に伴う整理解雇について人選基準毎に合理性を判断し17名中14名の解雇を無効とした事案・住友重機玉島製造所事件・岡山地判昭54.7.31労判326.44
(事案の概要)
整理解雇に対する仮処分の事案です。
本件会社は、構造不況といわれる造船不況に伴い、全社的に人員削減に取り組んでいました。会社は、退職勧奨、新規採用の募集、配置転換等の措置によっては人員削減の目標に達しなかったことから、強く退職を求める以下のような勇退基準を定め、これに該当する従業員に対して繰り返し退職勧奨をしたうえで、退職に応じない従業員を整理解雇の対象としました。
⑴過去5年間に減給又は出勤停止の懲戒処分を受けたことのある者
⑵過去3年間に事故欠勤、無届欠勤が一年につき三日以上もしくは通算6日以上の者
⑶正当事由なく出向の応じられなかった者
⑷廃止する職場に所属する者
⑸勤怠意欲にかけ業務に不熱心な者及び勤務成績の不良な者
⑹過去3年間に年次有給休暇及び就業規則所定の休暇以外の欠勤が1年に月5日以上もしくは通算10日以上の者
本件労働者ら17名は、退職勧奨に応じなかったため、それぞれ上記の⑴ないし⑹に該当するとして整理解雇されました。
(決定の要旨)
決定は、整理解雇が有効になるには、①企業が客観的に高度の経営危機下にあり、解雇による人員削減が必要やむを得ないものであること、②解雇に先立ち、退職者の募集、出向配置転換その他余剰労働力吸収のための努力を尽くしたこと、③整理基準の設定およびその具体的適用(人選)がいずれも客観性・合理性に欠けるものでないこと、④経営危機の実態、人員整理の必要性、整理基準等につき労働者側に十分な説明を加え、協議を尽くしたこと、の4要件を満たす必要があるとしました。
本件では、①②④の要件は満たしているとしました。
③整理基準の設定及び適用の合理性について上記勇退基準ごとに判断し、欠勤が著しく多かった2名⑵⑹と、出向に応じなかった1名⑶について整理解雇を有効としましたが、主観的な評価によって対象とされた者⑴⑸や、単に廃止する職場に所属していたことを理由とされた者⑷など、14名の解雇は不合理であるとして無効としました。