Case434 骨髄増殖性腫瘍の持病を持つ豚舎職員の人畜共通病原菌であるロドコッカス・エクイ菌の感染症について公務起因性を認めた事案・地公災基金熊本県支部長(農業研究センター)事件・熊本地判令5.1.27労判1290.5
(事案の概要)
公務災害を否定する認定処分に対する取消訴訟です。
本件労働者は、熊本県農林水産部農業研究センター畜産研究所中小家畜研究室(本件研究室)の養豚エリアで、豚の餌やり、餌箱内の豚の糞や豚房に溜まった糞をスコップなどで取り出し、残った糞を水で流すなどの業務を行っていました。
本件労働者は、持病として骨髄増殖性腫瘍(MPN)と診断されていました。
その後、本件労働者が左頚部リンパ節の腫瘍によりリンパ節摘出手術を受けたところ、人畜共通病原菌であるロドコッカス・エクイ菌が検出されました。さらに、肝膿瘍によりドレーン手術を受けたところ、肝臓の膿瘍、頚部リンパ節及び便からロドコッカス・エクイ菌が検出されました。
本件労働者は、肝膿瘍及び化膿性リンパ節炎(本件疾病)等が業務に起因するものであるとして地方公務員災害補償基金熊本支部長(処分庁)に対して公務災害認定請求をしましたが、MPNを原因とする肺炎及び心不全を原因とする敗血症により死亡し、妹で相続人である原告が手続きを承継しました。
しかし、処分庁は公務外の認定をしました。
(判決の要旨)
判決は、本件労働者は日常的にロドコッカス・エクイ菌に暴露する可能性の高い業務を行っており、本件業務に従事したことにより、ロドコッカス・エクイ菌に感染して本件疾病を発症したものと認められるとして、公務遂行性を認めました。
また、持病であるMPNによる免疫低下状態が感染に一定程度の影響を及ぼしたこと自体は否定できないものの、その影響の程度が高いものとはいえないとし、本件疾病は本件業務に内在または通常随伴する危険が現実化して発症したものであるとして業務起因性を認め、公務外認定を取り消しました。
※確定