Case442 院内連絡用PHSを常に携帯し休憩時間がなかったとして研修医の残業代請求及び労災損害賠償請求が認められた事案・医療法人社団誠馨会事件・千葉地判令5.2.22労判1295.24

(事案の概要)

 原告労働者は、被告法人が開設する病院で後期研修医として勤務し、多い時期には月100時間以上の時間外労働をし(判決の認定ベース)、適応障害を発症し休職しました。

 原告の雇用契約では、臨時日・当直及び時間外手当、早出、呼出、待機、手術手当等の手当については基本給に含まれるとされていましたが(固定残業代)、基本給のうちいくらが固定残業代であるかは明示されていませんでした。

 本件は、原告が法人に対して、残業代請求及び損害賠償請求をした事案です。

(判決の要旨)

1 固定残業代

 判決は、基本給のうちいくらが固定残業代であるかは明示されておらず、月額基本給のうち時間外労働に対する対価がいくらであるかを判別できたとはいえないとして、固定残業代の合意を無効としました。

2 実労働時間

 病院外でのオンコール待機時間については、病院外における原告の私生活上の自由時間に多大な影響を及ぼすということはできないとして、労働時間に該当しないとしました。なお、実際に電話対応していた時間や呼出に応じて出勤している時間は当然に労働時間とされています。

 また、休憩時間について、原告は出勤してから退勤するまで院内連絡用のPHSを所持し、原則いつでも看護師等からの電話を受けて対応する必要があったとして、休憩時間はなく出勤から退勤までをすべて労働時間としました。

3 労災損害賠償

 判決は、原告が4か月に渡り月100時間以上の時間外労働をしていたことなどが原告の適応障害発症の原因となったとして、業務起因性及び法人の安全配慮義務違反を認め、法人に対して慰謝料30万円や逸失利益約200万円の損害賠償を命じました。

 なお、原告が休職中に受給した傷病手当金は、業務外の疾病を対象とするものであり、業務上の疾病による損害額から控除(損益相殺)することは許されないとしました。

※確定

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