Case447 産業別労働組合の役員及び組合員が業界団体運営者に対する威力業務妨害及び強要未遂の罪に問われたが無罪とされた事件・全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(和歌山)事件・大阪高判令5.3.6労判1296.74

(事案の概要)

 労働組合の役員ないし組合員ら(被告人ら)が威力業務妨害および強要未遂の罪に問われた刑事訴訟です。

 被告人らは、生コン業界の労働者により組織される産業別労働組合である本件組合の役員ないし組合員をしていました。

 生コン事業者(使用者)の協同組合である広域協は、本件組合による生コン事業者に対する街宣活動を受けて、本件組合事務所の監視および調査活動を開始し、広域協の意を受けた元暴力団員が本件組合事務所を訪れ、本件組合の車両のナンバーをビデオ撮影するなどしました。

 被告人らは、広域協事務所で広域協の実質的運営者であるBと面談し、元暴力団員を組合事務所に差し向けた旨を認めて謝罪するよう求めましたが、その際にBを誹謗中傷するビラを撒くと予告したり、組合員4,50名を広域協事務所周辺に集結させてBを誹謗中傷する演説を大音量で繰り返したなどとして、威力業務妨害および強要未遂に問われました。

(判決の要旨)

 判決は、本件組合員に広域協に雇用された労働者がいないとしても、産業別労働組合である本件組合は、業界企業の経営者・使用者あるいはその団体と、労働関係上の当事者に当たるというべきだから、憲法28条の団結権等の保障を受け、これを守るための正当な行為は、違法性が阻却されるとしました。

 そして、被告人らのBに対する抗議の態様等は、Bの名誉を毀損する街宣活動といった若干行き過ぎといえる部分を含むものとはいえ、暴力を伴うものではなく、本件を含む本件組合と広域協との一連のやり取りを全体的に見た場合、被告人らの行為が社会的相当性を明らかに逸脱するとまではいいがたく、労組法1条2項の適用または類推適用により正当行為として違法性が阻却される合理的な疑いが残るとして、被告人らを無罪としました。

※確定

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