Case459 事業譲渡において特定の労働者の承継を排除する旨の合意を公序良俗違反により無効として包括承継の合意を認定した事案・勝英自動車学校(大船自動車興業)事件・東京高判平17.5.31労判898.16

(事案の概要)

 訴外A社と被告会社は、A社を譲渡人、被告会社を譲受人とする営業譲渡契約において「被告会社は、営業譲渡日以降は、A社の従業員の雇用は引き継がない。ただし、被告会社に対し策就職を希望した者で、かつ同日までにA社が被告会社に通知した者については、新たに雇用する。」と合意しました。

 A社は従業員全員に退職届を提出させ、提出した者を被告会社が再雇用しましたが、労働条件は低下するものとされていました。

 A社は、営業譲渡と同時に解散し、これに伴い、退職届を提出しなかった原告労働者ら8名は解雇され、被告会社に採用されませんでした。

 本件は、原告らが被告会社に対して雇用契約上の地位にあることの確認等を求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、A社と被告会社が、従業員の雇用を引き継ぐことを原則としながら、労働条件の低下に異議のある労働者を個別に排除すべく、従業員に退職届を提出させ、提出した者を再雇用するという形式を採ったとしました。

 そして、営業譲渡契約のうち、特定の労働者の承継を排除する旨の合意を公序良俗(民法90条)違反により無効とし、訴外A社と被告会社との間で雇用契約の包括承継の合意があったとしました。

 そのうえで、解散を理由とする原告らに対する解雇も無効とし、被告会社に対する雇用契約上の地位の確認等を認めました。

※上告棄却により確定

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