【解雇事件マニュアル】Q29労災保険法上の療養補償給付を受ける労働者も打切補償の対象になるか
(労基法81条)
第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。
労基法81条は、打切補償の対象となる労働者について、同法75条の規定による療養補償を受ける労働者に限定しているように読める。しかし、業務上災害の場合、労働者は、使用者による労基法75条の療養補償ではなく、労災保険法上の療養補償給付を受けていることがほとんどである。そこで、労働者が労基法75条の療養補償を受けずに、労災保険法上の療養補償給付のみを受けている場合にも労基法81条の打切補償の対象になるかが問題となる。
学校法人専修大学事件(上告審)・最二小判平27.6.8労判1118号18頁は、労災保険法上の給付は労基法上の災害補償に代わるものと位置づけられていることなどから、労災保険法上の療養補償給付を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には、労基法75条による療養補償を受ける労働者の場合と同様に、使用者は、当該労働者につき、同法81条の規定による打切補償の支払をすることにより、解雇制限の除外事由を定める同法19条1項ただし書の適用を受けることができるとした。 その後、同最高裁判例と同じ見解に立つ解釈例規(平27.6.9基発0609号4頁)が発出されている。