【労働組合】Case586 請負契約の個人作業者について労組法上の労働者性が認められた事案・国・中労委(ワットラインサービス)事件・東京高判令6.11.6労判1324.5

1 事案の概要

 原告X社は、電気メーターの計器工事を請負契約で個人作業者に委託していました。個人作業者らは合同労働組合の分会を結成し、X社に対し団体交渉を申し入れましたがX社は個人作業者が労働契約を締結している従業員ではないとして団体交渉を拒否しました。これに対し、組合は都労働委員会に不当労働行為救済命令を申し立て、都労委は救済命令を発令しました。その後、中央労働委員会でも救済命令が維持され、X社がその取消しを求めて訴訟を提起したものです。

2 判決の要旨

⑴ 個人作業者の労組法上の労働者該当性:

 裁判所は、労働組合法上の「労働者」は、労働契約に類する契約によって労務を提供して収入を得る者で、労働契約下にあるものと同等に使用者との交渉上の対等性を確保するために法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者を含むと解するのが相当であるとしました。

 そして、①事業組織への組入れ、②契約内容の一方的、定型的決定、③報酬の労務対価性、④業務の依頼に応ずべき関係、⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束、⑥顕著な事業者性の要素を検討した結果、個人作業者はX社の事業組織に組み込まれており、契約内容も一方的・定型的で、報酬に労務対価性があり、業務依頼に応ずべき関係や広い意味での指揮監督・時間的場所的拘束があり、顕著な事業者性がないとして、労働組合法上の労働者であると判断しました.

⑵ 不当労働行為該当性(団交拒否、支配介入)

ア 団体交渉拒否

 組合が団体交渉を求めた事項(労働条件、労働条件に関係しうる事項、団体的労使関係の運営に関する事項)は、X社に処分可能な義務的団交事項に該当すると判断しました。請負契約が期間満了で終了しても、その後に締結することが予定されている契約に関する事項は交渉対象になり得るとしました。 X社が団体交渉に応じなかったことは、正当な理由なく団体交渉を拒否する不当労働行為に該当すると判断しました。

イ 支配介入

 X社が、団体交渉申入れや不当労働行為救済命令申立ての対象となっている状況下で、組合員を含む個人作業者と個別に請負契約の取り交わし等を進めた行為は、単なる拒否ではなく、組合を無視し、その機能を阻害する行為であり、X社がこれを認識して行ったと認められるとして、支配介入の不当労働行為にも該当すると判断しました。

※上告受理申立て

Follow me!