Case275 雇用契約時の固定残業代の合意につき明確区分性を否定して無効としその後の固定残業代の合意も自由な意思に基づくものでないとして無効とした事案・酔心開発事件・東京地判令4.4.12労判1276.54
(事案の概要)
原告労働者は、被告会社が経営する飲食店で料理長として勤務していました。
平成22年に雇用契約時に締結した雇用通知書には、給与について、休日手当ならびに深夜にかかる割増分を含み総額で月24万円とする旨が記載されていました。
しかし、平成27年に会社から示され締結した雇用通知書には、給与の総額が月26万5000円で、その内訳が基本給20万、時間外手当5万5000円、料理長手当1万円とされていました。
本件は、原告が会社に対して残業代等を請求した事案です。
(判決の要旨)
判決は、仮に本件雇用契約時に会社が原告に対して給料に固定残業代が含まれる旨を説明していたとしても、会社が原告に対してその内訳を説明して合意をしたとは認められないから、被告の主張する固定残業代は、基本給部分とこれに対する割増賃金部分を明確に区分することができないものであり、無効であるとしました。
また、平成27年の雇用通知書について、実質的に原告の給与を3万円減額するものであるが、会社が原告に対して賃金の引下げとなることを説明した形跡すら窺われないとして、原告が自由な意思に基づいて基本給を20万円に引き下げ、5万5000円を固定残業代として支払うことについて合意をしたと認めることはできないとしました。
※確定