Case431 部下を指揮監督していたとしても割増賃金の支給すら決定権限を有していないことから管理監督者を否定した労災取消訴訟・国・広島中央労基署長(アイグランホールディングス)事件・東京地判令4.4.13労判1289.52
(事案の概要)
原告労働者が、労基署長が行った原告が管理監督者であることを前提とした労災支給決定の取消しを求めた取消訴訟です。
原告は、会社において、取締役会と管理本部の下にある管理本部経理部長の地位にあり、経理課と管理課の8名の部下がいましたが、労務管理に関してはその出退勤の事実確認をするのみで、割増賃金の支給等の権限は有していませんでした。
原告は適応障害を発症し、労基署長は労災支給決定をしましたが、原告が管理監督者に当たることを前提に、割増賃金を算入せずに給付基礎日額を算定しました。
(判決の要旨)
判決は、管理監督者とは、労務管理について経営者と一体的な地位にある労働者をいい、ここでいう経営者と一体的な立場とは、あくまで労務管理に関してであって、使用者の経営方針や経営上の決定に関与していることは必須ではなく、当該労働者が担当する組織の範囲において、経営者が有する労務管理の権限を経営者に代わって所掌、分掌している実態がある旨をいうとしました。
そして、部下の指揮監督をしていたとしても、割増賃金の支給すら決定権限を有しないのであれば、これを経営者に代わって労務管理の権限を分掌していると評価することはできないとして、原告が管理監督者に当たらないとして、管理監督者を前提とする労災支給決定を取り消しました。
※確定