Case457 旧会社の解散及び新会社の設立に際して特定の労働者を新会社に採用しなかったことが法人格の濫用に当たるとして整理解雇法理を類推適用した事案・新関西通信システムズ事件・大阪地決平6.8.5労判668.48
(事案の概要)
業績が悪化した訴外A社の経営陣は、A社を解散して本件会社を設立し、本件会社に資産を承継させました。A社は解散に際して従業員全員を解雇し、従業員の大半を本件会社に採用しましたが、労働組合に加入していた本件労働者は採用されませんでした。
本件は、本件労働者が、本件会社に対して、労働契約上の地位の保全等を求めた仮処分の事案です。
(決定の要旨)
決定は、A社と本件会社には高度の実質的同一性が存在し、A社を解散して本件会社を設立した目的は、差押えによる信用失墜を避けること等であるところ、組合活動を行っていた本件労働者を排除する意図も併せもって解散ならびに設立の機会を利用したとしました。
そのうえで、本件会社が本件労働者との雇用関係を否定することは、実質的に解雇法理の適用を回避するための法人格の濫用であり、A社の解雇ならびに不採用は実質的に解雇に相当するから、整理解雇法理が類推適用されるとし、整理解雇の有効要件を満たさないとして本件労働者の労働契約上の地位の保全を認めました。