Case502 下請会社の後継ぎである養成社員の長時間労働及び上司からのパワハラについて会社に勤務管理義務及びパワハラ防止義務違反が認められた事案・日本土建事件・津地判平21.2.19労判982.66
(事案の概要)
建設業を営む被告会社の下請会社の後継ぎ息子であった本件労働者は、養成社員として被告会社に入社してから2か月足らずで過酷な本件現場に配属されました。
本件労働者は連日長時間労働をしていましたが、被告会社は月50時間を超える時間外手当の支払いをせず、タイムカードや工事日報記載もないなど労働時間管理が極めてずさんでした。本件労働者は入社約1年半で対数が十数キロ激減し、顔色も悪くなり睡眠不足を訴えていました。本件労働者の父である原告Aは被告会社に対して残業軽減を申し入れましたが、十分な対応や気遣いがされることはありませんでした。
また、本件労働者は、指導担当であるCから、本件労働者が下請け会社の後継ぎ息子であることについて嫌味を言われたり、机をけ飛ばす、残業を命じて自分は先に帰る、本件労働者に向かってガムを吐きズボンについたのを見て笑う、針のついた球を投げつけ足に全治1週間程度の傷害を負わせ口止めするなどのパワハラを受けていました。
本件労働者は、Cらと飲酒した後、Cらの要求でCらを車で自宅に送る途中に交通事故を起こし同乗していたCらとともに死亡しました。
本件は、本件労働者の両親である原告らが被告会社に対して損害賠償請求した事案です。
(判決の要旨)
判決は、本件労働者が恒常的に月100時間前後の時間外労働をしていたと認定したうえ、本件労働者は、入社して2か月足らずで本件現場に配属されてから、極めて長時間におよぶ時間外労働や休日出勤を強いられ、体重が十数キロ激減し、絶えず睡眠不足の状態になりながら仕事に専念してきたところ、月50時間を超える時間外手当を支払わず、残業の把握さえ怠っていた被告会社の対応は、職務により健康を害しないよう配慮(管理)すべき義務(勤務管理義務)としての安全配慮義務に違反していたとしました。
また、本件労働者は、上司であるCから極めて不当な肉体的精神的苦痛を与えられ続けたのに、被告会社が本件労働者に対する上司の嫌がらせを解消するべき措置をとらなかったのは、被告会社の社員が養成社員に対して被告会社の下請会社に対する優越的立場を利用して養成社員に対する職場内の人権侵害が生じないように配慮する義務(パワーハラスメント防止義務)としての安全配慮義務に違反していたとしました。
そして、被告会社に対して慰謝料150万円を支払うよう命じました。
※確定