【労災】Case607 シルバー人材センターを通じて就労する高齢者が労災保険法上の労働者に当たるとされた事案・国・西脇労基署長(加西市シルバー人材センター)事件・神戸地判平22.9.17労判1015.34

シルバー人材センターを通じて請負や業務委託で就労している高齢者は労災保険が適用される労働者に当たるのでしょうか。

【事案の概要】

原告Xは、物流機器製造業を営む訴外会社に工員として勤務していましたが、定年退職後、シルバー人材センターに会員登録し、定年退職前と全く同じ職務内容で訴外会社の加工部門にて仕事を継続していました。Xは、再雇用により年金が減額されることを避けるため、また病気がちの実母の介護のために時間の拘束を減らしたいと考え、センターを通じて就労することを選択しました。

訴外会社とセンターの間でXの就労条件に関する詳細な話し合いはなく、時間あたりの報酬額が決められたのみで、請負契約書や準委任契約書も交わされていませんでした。Xはセンターに登録する際、就労中の負傷は自己負担となる説明を受けていました。

Xは訴外会社での作業中に、機械の誤作動により左手の親指から中指の3指を切断する傷害を負いました。

Xは労災保険法に基づく療養補償給付および休業補償給付の申請をしましたが、西脇労基署長は、Xが労災保険法上の労働者に該当しないことを理由に不支給処分としました。Xはこれに対し、審査請求、再審査請求を行いましたが棄却されたため、本件訴訟を提起し、処分の取消しと支給決定の義務付けを求めました。本件の主要な争点は、Xが労災保険法上の「労働者」に該当するか否かでした。

【判決の要旨】

判決は、労災保険法における「労働者」は労基法上の労働者と同義であり、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義されるため、使用者の指揮監督の下に労務を提供し、その対価として報酬が支払われる「使用従属関係」にあるか否かを基準に判断すべきとしました。

本件において裁判所は、Xがセンターに登録後も、定年退職前と全く同様に訴外会社の加工部門で専ら就労しており、以下の点から訴外会社と使用従属関係にある労働者に該当すると認めました。

⑴ 業務従事の諾否の自由及び業務遂行上の指揮監督

Xが訴外会社からの業務指示を拒否した事実はなく、他方、加工作業の必要に応じて残業や休日出勤を行って指示された納期に対応していたことから、訴外会社の指揮命令を受けて指示された業務を行っており、業務に対し諾否の自由を有していなかったとしました。

⑵ 時間的・場所的拘束性

訴外会社の工場に就労場所が限定され、他の従業員と同様に訴外会社の管理下で出退勤しており、就業場所及び就業時間について、訴外会社の管理を受けていたとしました。

⑶ 代替性

X以外の者が訴外会社で労務を提供することは当初から予定されておらず、代替性はなかったとされました。

⑷ 報酬の労働対償性

センターからXに支払われた配分金(訴外会社がセンターに支払った代金から、手数料を引いたもの)は、就労時間を基準とし、時間外労働には割増額が支払われるなど、実質的には労務の対価たる賃金として支払われていたとしました。

以上の理由から、本件事故は業務上の事由により生じたことが明らかであり、Xが労働者に該当しないという理由でされた不支給処分は違法であるとして取り消され、療養補償給付および休業補償給付の支給決定を行うことの義務づけが認められました。

※確定

【まとめ】

・労働者性の判断は、契約の名称等の形式にかかわらず、就労実態に基づき「使用従属関係」の有無を実質的に総合判断する。

・シルバー人材センターの会員であっても、実態として会社から指揮監督を受け、労務の対価として報酬を得ている場合は、労災保険法上の労働者と認められる可能性がある。

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