Case109 53歳以上の従業員の基本給を最大20%以上減額する労働協約を無効とした事案・中根製作所事件・東京高判平12.7.26労判789.6
(事案の概要)
被告会社は、経営不振を理由に合理化計画として53歳以上の従業員の月額基本給を最高20%以上減額する案を労働組合に提示しました。組合執行部は、組合大会に付議することなく、慣例に従い職場集会にかけて意見を聴取した後、代議員会において会社案が了承され、会社案を内容とする本件労働協約が締結され給与減額が行われました(第1次減額)。
続いて、会社は経営不振を理由に、今度は全従業員を対象とする給与減額案を組合に提示しました。組合は協約締結を拒否しましたが、会社は過半数の従業員の給与を減額しました(第2次減額)。
本件は、賃金減額された原告組合員15名が、各給与減額の無効を主張して差額賃金等の支払を求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、第1次減額について、組合が本件労働協約締結について組合大会に付議しなかったことについて、本件のような基本的労働条件を不利益に変更する場合には協約締結を大会付議事項としている組合規約に反し許されないとしました。また、本件労働協約は経営上の必要性がなく、大きな不利益に対する調整規定も不十分であるなど合理性に欠けるとし、本件労働協約の効力は組合員に及ばないとしました。
また、第2次減額について、会社の行った説明会におけるアンケートに従業員の過半数の支持があったこと、減額に意見があれば申し出るように促した通知書に対して原告らから異議の申出がなかったという事実だけでは原告らの明示または黙示の同意があったとはいえず、原告らの同意なく行われた第2次減額は無効であるとし、原告らの請求を認めました。
※上告棄却により確定