Case66 業務委託契約のカスタマーエンジニアについて労組法上の労働者性を認めた最高裁判例・INAXメンテナンス事件・最判平23.4.12労判1026.27【百選10版3】
(事案の概要)
原告会社は、業務委託契約を締結しているカスタマーエンジニアAが加入した労働組合から団体交渉の申入れを受けましたが、Aが労働組合法上の労働者ではないとしてこれを拒否しました。
労働組合は、原告会社の団交拒否が不当労働行為であるとして、労働委員会に救済申立てを行い、大阪府労働委員会及び中央労働委員会は、Aの労働者性を認め原告会社に対して不当労働行為救済命令を発しました。
本件は、原告会社が、中央労働委員会命令の取消を求めた取消訴訟です。
(判決の要旨)
一審判決
一審は、Aの労働者性を認めて原告会社の請求を棄却しました。
控訴審判決
控訴審は、Aの労働者性を否定し、救済命令を取り消しました。
上告審判決
最高裁は、Aが原告会社の事業の遂行に不可欠な労働力として原告会社の組織に組み入れられていたこと、原告会社がAとの契約内容を一方的に決定していたこと、Aの報酬が労務の提供の対価としての性質を有すること、Aが基本的に原告会社による個別の修理補修等の依頼に応ずべき関係にあったこと、Aが原告会社の指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督の下に労務の提供を行っており、かつ、その業務について場所的にも時間的にも一定の拘束をうけていたこと等を認定し、以上の諸事情を総合考慮すれば、Aは原告会社との関係において労働組合法上の労働者に当たるとしました。