【パワハラ、損害賠償】Case85 米国人上司のパワハラ等につき国の損害賠償責任が認められた事案・国(在日米軍厚木航空施設・パワハラ)事件・東京高判令5.6.28労判1327.61

(事案の概要)

 原告労働者は、国に雇用され米軍厚木航空施設内の軍人および家族支援センター(FFSC)で勤務していました。

 原告は、米国人上司から「あなたはうそつきだ。」「あなたの全てが気に入らない。」「あなたをクビにしてやる。」「やること全てが間違っている。」などと叱責を受けた後、適応障害を発症し、1年9か月間休職しました。

 復職後、原告は、不本意な配置転換や就業時間の変更を受けるなどしました。原告は、上司に対して復職後の処遇にかかる不満を述べたメールや書簡を提出するとともに、早期退職制度を利用してFFSCを退職しました。

 また、原告は、上司の叱責により適応障害を発症したとして、労災支給決定を得ました。

 本件は、原告が、上司の叱責等により適応障害を発症し、また復職後の処遇と相まって退職に追い込まれたとして、①米軍の不法行為責任、②米軍の安全配慮義務違反、③国の安全配慮義務違反を理由に国に対して損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、米軍上司の「あなたはうそつきだ。」「あなたの全てが気に入らない。」「あなたをクビにしてやる。」「やること全てが間違っている。」などの叱責は、職場内の優位性を背景として、業務の適正な範囲を超えて、精神的、身体的苦痛を与える行為に該当し、原告の人格権の侵害に当たるとしました。また、復職に先立って原告の意向等を含む情報収集をせず、原告に対して復職後の担当職務等に係る情報を提供して復帰後の業務について理解を得るように努めなかったこと、配置転換が元の業務に復帰させるための一時的な措置であったことなどの情報を提供しなかったことは、復職後の業務に係る業務遂行につき不安や不満を抱えることとなった原告に対する配慮を著しく欠いた違法なものであり、米国は原告に対して職場環境配慮義務を怠ったとしました。

 そして、慰謝料150万円を認めました。

 国の責任の構成としては、①特別法に基づく米軍の不法行為責任にかかる損害賠償権については、米国の不法行為責任を認めつつ時効消滅しているとしました。②特別法に基づく米軍の安全配慮義務違反にかかる損害賠償請求は認められました。③国自身の安全配慮義務違反はないと判断されました。

※確定

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