Case85 米国人上司のパワハラにつき国の損害賠償責任が認められた事案・国(在日米軍厚木航空施設・パワハラ)事件・東京地判令3.11.22労判1258.5
(事案の概要)
原告労働者は、国に雇用され米軍厚木航空施設内の軍人および家族支援センター(FFSC)で勤務していました。
原告は、米国人上司から「あなたはうそつきだ。」「あなたの全てが気に入らない。」「あなたをクビにしてやる。」「やること全てが間違っている。」などと叱責を受けた後、適応障害を発症し休職しました。
復職後、原告は、配置転換や就業時間の変更を受けるなどしました。原告は、上司に対して復職後の処遇にかかる不満を述べたメールや書簡を提出するとともに、早期退職制度を利用してFFSCを退職しました。
また、原告は、上司の叱責により適応障害を発症したとして、労災支給決定を得ました。
本件は、原告が、上司の叱責等により適応障害を発症し、また復職後の処遇と相まって退職に追い込まれたとして、①米軍の不法行為責任、②米軍の安全配慮義務違反、③国の安全配慮義務違反を理由に国に対して損害賠償請求した事案です。
(判決の要旨)
判決は、米軍上司の「あなたはうそつきだ。」「あなたの全てが気に入らない。」「あなたをクビにしてやる。」「やること全てが間違っている。」などの叱責は、職場内の優位性を背景として、業務の適正な範囲を超えて、精神的、身体的苦痛を与える行為に該当し、原告の人格権の侵害に当たるとしましたが、復職後の処遇等については違法性を否定しました。
また、上司の叱責と適応障害発症との因果関係を認めましたが、退職との因果関係は否定し、慰謝料50万円のみ認めました。
国の責任の構成としては、①米軍の不法行為責任、②米軍の安全配慮義務違反に基づく責任が認められ、③国自身の安全配慮義務違反はないと判断されました。
※控訴