Case99 公民権の行使等に要した時間に対応する賃金を支給しないこととする就業規則の不利益変更の合理性が否定された事案・全日本手をつなぐ育成会事件・東京地判平23.7.15労判1035.105
(事案の概要)
被告法人では、旧就業規則に「公民権行使のため遅刻または早退した時は、届け出により遅刻、早退のとり扱いをしない。」との規定がありましたが、本件就業規則変更により廃止されました。
被告法人で働く原告労働者は、東京都労働委員会から6回にわたり証人として呼出を受け、被告を早退して出頭しました。これを受けて、被告は、出頭による不就労時間に応じて、原告の賃金及び賞与を控除しました。
本件は、原告が、賃金及び賞与の控除が無効であるとして、控除された賃金及び賞与の支払を求めた事案です。これに対して、被告は、控除が不十分であったとして、過払金の不当利得返還を求めて反訴しました。
(判決の要旨)
判決は、公民権の行使等に要した時間に対応する賃金を支給しないこととした就業規則の不利益変更は、労働者に与える経済的不利益は些少であるにしても「有給扱いという待遇の下、公民権の行使等の公的活動に容易に参画し得る地位ないし権利」に対してかなり大きな負の影響を与えるものであって、重要な労働条件につき実質的な不利益性を有するものであるにもかかわらず、「高度な経営上の必要性」に基づいて本件就業規則変更が行われたとはいいがたいとして、本件就業規則変更を無効として、原告の請求を認め、被告の反訴を棄却しました。
※控訴