Case113 3年間減額後の賃金を受領していたとしても賃金減額に黙示の合意は認められないとした事案・NEXX事件・東京地判平24.2.27労判1048.72

(事案の概要)

 被告会社は、原告労働者に対して、月額60万円を基準として給与を支払っていました。会社は、全従業員に対し説明会を開き、売上が振るわないため業績変更時の給与支給水準を設けたい旨説明し、従業員から反対の声は上がりませんでした。会社は、原告に対して、月額48万円(20%減)を基準として給与を支払うようになり、原告は3年間減額後の給与を受領し続けていました。

 なお、原告と会社の雇用契約には「給与条件は、本人の勤務状況、成績等と会社の業績状況に鑑み、会社の判断により、適宜年度ごと後年の調整を実施する」という本件改定条項が設けられていました。

 その後、原告は会社から業務命令違反や能力不足を理由に解雇されました。

 原告は、会社に対して、賃金減額に同意していないと主張して差額賃金の支払を求めるとともに、不当解雇に基づく損害賠償等を求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、労働契約において、賃金は最も基本的な要素であるから、賃金額引下げという契約要素の変更申入れに対し、労使間で黙示の合意が成立したといえるためには、ただ労働者が異議を述べなかったというだけでは十分ではなく、このような不利益変更を真意に基づき受け入れたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要であるとし、まず本件改定条項は労働契約法8条に反し無効であるとしました。また、会社の賃金減額理由の説明が抽象的であったこと等から、原告が賃金減額を真意に基づき受入らと認めるに足りる合理的な理由は認められないとして、賃金減額への黙示の合意があったとはいえないとし、差額賃金の支払を認めました。

 解雇については、会社の主張する解雇理由が認められ、解雇は有効であるとされました。

※控訴

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