Case178 賃金減額規定が、減額事由、減額方法、減額幅等の点において基準としての一定の明確性を有するものでなければ個別の賃金減額の根拠たり得ないとした事案・ ユニデンホールディングス事件・東京地判平28.7.20労判1156.82

(事案の概要)

 被告会社は、賃金規程の以下の規定を根拠に原告労働者を部長職から課長職へ降格し、賃金を減額しましたが、原告は特に異議を述べていませんでした。

・昇降給は、月例給について行う。昇降給は、部署の業績および個人の職務成績等を考慮して決定する

・次の各号のいずれかに該当する社員については、昇給の保留または降給を行うことがある

 (1)技能および勤務成績が低い社員

・健康状態、成果等本人に付随する事項を勘案し、担当職務見直しに合わせ、給与の見直しを行う場合がある。見直し幅は、都度決定する

 本件は、会社を退職した原告が、本件賃金減額の無効を主張し、差額賃金の支払いを求めた事案です。

 その他に、雇用条件通知書に基づく退職金請求が認められ、不法行為に基づく慰謝料請求が否定されています。

(判決の要旨)

 判決は、使用者が、個々の労働者の同意を得ることなく賃金減額を実施した場合において、当該減額が就業規則上の賃金減額規程に基づくものと主張する場合、賃金請求権が、労働者にとって最も重要な労働契約上の権利であることにかんがみれば、当該賃金減額規程が、減額事由、減額方法、減額幅等の点において、基準としての一定の明確性を有するものでなければ、そもそも個別の賃金減額の根拠たり得ないとしました。

 そのうえで、本件規程では、減額方法、減額幅等の基準が示されているということはできず、本件規程が個別の賃金減額の根拠になるということはできないから、本件規程に基づく本件賃金減額は無効であるとしました。

 また、会社の、原告が本件降格を受け入れ課長職として業務に従事していたとの主張に対しては、原告が自由な意思で本件賃金減額に同意したものと認めるに足りる的確な主張立証はないとしました。

※控訴

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