Case227 理事長が決裁した支給表が賃金規程の「別の定め」に当たり入試手当の支給根拠になるとした事案・学校法人上野学園事件・東京地判令3.8.5労判1271.76
(事案の概要)
本件は、被告法人が運営する大学の教員である原告ら労働者6名が、入試手当等の支払い等を求めた事案です。
法人の賃金規程には、入試手当について「支払額は別に定める」とのみ規定されていました。平成12年度の入試に際して、法人は、総務部長が理事長に決裁を得た「大学・中高入試手当支給額表(案)」(本件支給表)に基づき専任教員に対しても入試手当を支払っていましたが、平成13年度からは専任教員を入試手当の対象から除外しました(本件変更)。
本件支給表が賃金規程の「別の定め」に当たり入試手当の支給根拠になるか、本件変更が有効かが争点となりました。
(判決の要旨)
判決は、本件支給表が理事長の決裁を得るために作成されたものであることや、実際に記載された金額で入試手当が支給されたことなどの事情を総合考慮すると、本件支給表は法人内部において入試手当の支給金額を定めたものであり、給与規程にいう別の定めに当たるとしました。
そして、賃金規程は専任教員に支給することを前提に「支給額は別に定める」としていたところ、総務部長の提案を理事長が決裁する形式で専任教員を入試手当の支給対象から除外する本件変更が法的拘束力を有するためには、就業規則等により労働条件を不利益変更する場合と同様に、当該条項がそのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであることが必要であるとしたうえ、本件変更の合理性を否定し、原告らのうち、本件変更前に法人と雇用契約を締結していた1名について入試手当の支払いを認めました。
※確定