Case277 タイムカードで時間管理されていた営業職員について事業場外みなし制の適用が否定された事案・ヨツバ117事件・大阪地判令4.7.8
(事案の概要)
原告労働者は、被告会社において営業職として外回りをしていましたが、就業規則において始業・終業時のタイムカードの打刻が義務付けられており、実際に原告は多くの日にタイムカードに打刻していました。
また、原告の給料から「業務控除」などの名目で天引きがなされていました。
本件は、原告が会社に対して残業代を請求するとともに、天引きされた給与の支払いを求めた事案です。会社は、原告に事業場外労働みなし時間制が適用されると主張しました。
(判決の要旨)
1 事業場外みなし制について
判決は、事業場外みなし制の適用要件である「労働時間を算定し難いとき」(労基法38条の2第1項)に該当するというためには、業務の性質・内容、業務に関する指示及び報告の方法・内容等を踏まえ、使用者の具体的な指揮監督が及ぶか、使用者が労働者の業務の状況を具体的に把握することができるかなどの観点から検討していくことが必要であるとしました。
そして、会社は、原告のタイムカードの打刻内容を確認することで、原告の労働時間を把握することが容易に可能であったとして、原告の業務が「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえず事業場外みなし制は適用されないとし、会社に対して残業代及び付加金の支払いを命じました。
2 給料天引きについて
判決は、会社の主張を善解すれば、原告が天引きに同意していた、あるいは賃金を放棄していた旨主張するものと解されるが、当該同意や放棄は自由な意思に基づくものであることが必要であるとしました。
そして、原告が天引きに異議を唱えなかったことなどをもって自由な意思に基づく同意や放棄があったとはいえないとして、天引きを違法としました。