Case294 システムエンジニアの派遣・紹介会社における退職後1年間の競業避止条項が公序良俗に反し無効とされた事案・REI元従業員事件・東京地判令4.5.13労判1278.20
(事案の概要)
会社が労働者に対して損害賠償請求した事案です。
派遣・紹介会社である原告会社と雇用契約を締結しA社でシステムエンジニアとして働いていた被告労働者は、原告会社を退職した後に秘密保持契約書(本件合意書)に署名押印しました。本件合意書には以下の競業避止条項がありました。
第4条(競業避止義務の確認)私は、……退職後1年間にわたり次の行為を行わないことを約束いたします。
⑴貴社との取引に関係ある事業者に就職すること
⑵貴社のお客先に関係ある事業者に就職すること
⑶貴社と取引及び競合関係にある事業を自ら開業または設立すること
被告労働者は、原告会社を退職した後、本件合意書締結前からB社と業務委託契約を締結しA社などで働いていました。
原告会社は、被告労働者に対して、競業避止義務違反に基づく損害賠償請求をした事案です。
被告労働者は、原告会社に対して、未払賃金の支払いを求めて反訴しました。
(判決の要旨)
判決は、従業員の退職後の競業避止義務を定める特約は、従業員の再就職を妨げてその生計の手段を制限し、その生活を困難にする恐れがあるとともに、職業選択の自由に制約を課すものであることに鑑みると、これによって守られるべき使用者の利益、これによって生じる従業員の不利益の内容及び程度並びに代償措置の有無及びその内容等を総合考慮し、その制限が必要かつ合理的な範囲を超える場合には、公序良俗に反して無効であるとしました。
そのうえで、原告会社が派遣・紹介会社であってシステム開発等に関する独自のノウハウを有するものではなく原告会社が退職後の競業避止義務を定める目的・利益が明らかとはいえない一方、被告労働者が禁じられる転職等の範囲は広範で、その代償措置も講じられていないことからすると、競業義務の期間が1年間にとどまることを考慮しても、本件合意書に基づく合意は、その制限が必要かつ合理的な範囲を超える場合に当たるものとして公序良俗に反し無効であるとしました。
一方で、被告労働者から原告会社に対する未払賃金請求が認められました。
※確定