Case311 月131時間14分相当の固定残業代の定めが公序良俗に違反し無効であるとされた事案・木の花ホームほか1社事件・宇都宮地判令2.2.19労判1225.57
(事案の概要)
本件は、原告労働者が、被告会社ら(転籍前後に2社)に対して、固定残業代及び変形労働時間制の無効を主張して残業代請求した時間です。
被告らでは、職務手当が月131時間14分相当の固定残業代であるとされていました。
また、1か月単位の変形労働時間制について、被告らにおいては、ただ単にカレンダーが作成されているだけで、具体的にどの日に何時から何時まで勤務するということの取り決め等がありませんでした。
賃金減額に対する黙示の同意の有無及び減額の有効性、パワハラの有無等も問題となりました。
(判決の要旨)
1 固定残業代
判決は、過労死ラインである月80時間を大きく超える1か月131時間14分の固定残業代の定めは、「実際には、長時間の時間外労働を恒常的に行わせることを予定していたわけではないことを示す特段の事情」が認められない限り公序良俗に違反して無効であるとし、本件では上記特段の事情はないとして、固定残業代の定めを公序良俗違反により無効としました。
2 変形労働時間制
変形期間における労働時間の特定の要件を欠き無効とされました。
3 その他
判決は、いわゆる自由な意思論により、賃金減額に対する原告の黙示の同意は認められないとし、明確な就業規則上の根拠のない減額を無効としました。
また、パワハラによる慰謝料として100万円を認めました。
※控訴後和解