Case322 打刻時の位置情報を把握できるシステムの導入により直行直帰のMRの労働時間を算定できるようになったとして事業場外みなし制が無効とされた事案・セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン事件・東京高判令4.11.16労判1288.81
(事案の概要)
原告労働者は、製薬会社である被告会社でMRとして営業の職務に従事し、自宅と営業先を直行直帰していました。
会社が導入した勤怠管理システム(本件システム)では、出退勤の打刻時点における従業員の位置情報を把握することができました。
しかし、会社は、本件システム導入後もMRについては事業場外みなし制を適用していました。
本件は、原告が会社に対して、事業場外みなしの無効を主張して残業代請求した事案です。
(判決の要旨)
判決は、MRの各日の具体的な訪問先やスケジュールは各人の裁量に任されていたものの、会社は、事後的にではあるものの、MRが1日の間に行った業務の営業先と内容とを週報で具体的に報告させることにより、それらを把握することが可能であったとしました。
また、本件システムの導入によりMRについても始業時刻及び終業時刻を把握することが可能となったとし、本件システム導入後については労基法38条の2第1項の「労働時間を算定し難い」ときに当たらないとして事業場外みなし制を無効としました。
もっとも、残業の事実が認められないとして原告の請求は棄却しました。