Case482 上司のパワハラの違法性は否定されたものの長時間労働及び上司の指導によりうつ病を発症したことについて会社の安全配慮義務違反が認められた事案・横河電機(SE・うつ病罹患)事件・東京高判平25.11.27労判1091.42

(事案の概要)

 原告労働者は、被告会社において、チームリーダー及び被告サブリーダーを含む4人チームでソフト開発等の業務に従事していました。

 原告の平成17年11月頃の1か月あたりの時間外労働時間は90時間を超えており、産業医から残業を止められていました。

 その後も原告は残業し、うつ病を発症し(本件発症)、平成17年12月21日、残業中に身体が硬直し数時間動けない状態となったため、チームリーダーが原告を実家にタクシーで帰宅させ、原告はそこから平成18年2月10日まで休職しました。一旦復職したものの、原告は平成18年10月26日から再び休職し、平成20年11月1日付で試用期間として仮復職しましたが、体調不良で休むことが多かったため仮復職を取り消され平成21年1月30日付で退職扱いとなりました。

 本件は、原告がうつ病にり患したのは長時間労働及び被告サブリーダーからのパワハラが原因であるとして、会社及び被告サブリーダーに対して損害賠償請求等した事案です。

 会社は、原告には本件発症の7年以上前にうつ病の既往歴があったことから、業務と本件発症には相当因果関係がないという主張や、過失相殺の主張をしました。

(判決の要旨)

 判決は、被告サブリーダーの原告に対する言動には業務上の指示・指導の範囲を逸脱したものはないとして、被告サブリーダーの責任は否定しました。

 そのうえで、原告は、長時間労働による肉体的・精神的疲労の蓄積と、被告サブリーダーの業務上の指示・指導による精神的ストレスの蓄積が重なって、平成17年11月下旬頃うつ病を発症した上、開発業務の納期が次々と到来する状況で過重な業務を継続する中、その業務の成果が認められないという出来事も発生し、更に症状が悪化したとしました。

 また、①原告の時間外労働時間は、うつ病を発症した前後には1か月あたり90時間を超える程度に及んでおり会社はそれを把握していたこと、②チームリーダーや被告サブリーダーは原告の業務量、業務の進捗状況とその納期を把握していたこと、③原告が被告サブリーダーの下で仕事をすることをつらいと感じていることはチームリーダー等において把握していたこと、④原告が体調を崩しつつあることも、同僚らにおいて認識しており、チームリーダー及び被告サブリーダーにおいても把握可能であったことから、会社は原告のうつ病発症を予見することが可能であったとしました。

 そして、原告にうつ病の既往歴があることを考慮しても、上記業務上の心理負荷とうつ病の発症及び悪化との間には相当因果関係があるとし、うつ病発症について会社の安全配慮義務違反を認めました。

 判決は、会社の過失相殺の主張は否定しましたが、原告のうつ病の症状が遷延化し、原告の休職が長期間に及んだことについては原告個人の素質等が寄与しているとして、平成18年10月末日までの損害は全て相当因果関係が認められるが、その後平成19年10月末日までの損害は50%の限度で相当因果関係が認められ、その後の損害は相当因果関係が認められないとしました。

※上告

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