【残業代】Case596 年収1000万円の経営課長の管理監督者性が否定された事案・スター・ジャパン事件・東京地判令3.7.14労判1325.52【労働弁護士が選ぶ今日の労働裁判例】
【事案の概要】
本件は、被告Y社と労働契約を締結して就労していた経理課長である原告Xが、Y社に対して未払い残業代を請求した事案です。原告の給与は月額90万円から97万5185円(年収1080万円から1170万2220円)と比較的高額で、管理監督者性が争点となりました。
【判決の要旨】
裁判所は、労働基準法41条2号に定める「管理監督者」に該当するか否かについて、①事業主の経営上の決定に参画し、労務管理上の決定権限を有しているか(経営への参画状況、部下に関する採用・解雇、人事考課等の人事権限、部下らの勤務割等の決定権限等の有無・内容、現場作業・業務への従事の有無・程度)、②自己の労働時間についての裁量を有しているか、③管理監督者にふさわしい賃金等の待遇を受けているかといった視点から、個別具体的な検討を行い、これらを総合考慮して判断するのが相当であるとしました。
経営への参画状況と労務管理上の決定権限
①事業主の経営上の決定への参画・労務管理上の決定権限
経営上重要な事項の決定、採用、人事考課、業務の割当て、労働時間の管理のいずれについても原告の権限や影響力は限定的なものであったといわざるを得ず、これに加え、原告の部下の人数は3ないし4名と少なく、原告の労働時間の中でマネジメント業務を行っている時間はわずかであり、原告は主として部下が担当する業務と同様の業務に従事していたことを踏まえると、原告は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者ということはできないとしました。
②自己の労働時間についての裁量
原告はフレックスタイム制の対象でしたが、出退勤時刻の申告や、コアタイムに欠勤した場合の半休(有給休暇)を求められるなど、比較的厳格な管理を受けていたとされました。
以上より、③原告の給与が比較的高額であることを考慮しても、原告は管理監督者に該当しないとして、原告の残業代請求を認めました。付加金は否定されています。
※確定
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