Case386 派遣旅行添乗員につき派遣先旅行会社の指揮監督が及んでいるとして事業場外みなし制の適用が否定された事案・阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第3)事件・東京高判平24.3.7労判1048.26

(事案の概要)

 原告労働者らは、被告会社に登録型派遣社員として雇用され、旅行会社A社に派遣されて国内外旅行ツアーの添乗員として業務に従事していました。

 原告らの添乗業務は、最終日程表、指示書、行程表に沿って行われ、ツアー中はA社貸与の携帯電話の電源を常時入れておくように指示されていました。また、ツアー終了後には、ツアー内容を記載した添乗日報を提出するよう求められていました。

 本件は、原告らが被告会社に対して未払残業代を請求した事案です。

 被告会社は、事業場外労働時間のみなし制が適用されると主張しました。

 その他、実作業に従事していない時間の労働時間該当性、固定残業代、法定休日労働の有無等が問題となりました。

(判決の要旨)

1 事業場外みなし制

 判決は、事業場外みなし制が適用される「労働時間を算定し難いとき」(労基法38条の2第1項)とは、当該業務の就労実態等の具体的事情を踏まえて、社会通念に従って判断すると、使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価され、客観的にみて労働時間を把握することが困難である例外的な場合をいうとしました。

 本件においては、原告らの労働時間は派遣先であるA社が把握していたのであるから、原告らの業務が労働時間を算定し難いものであるか否かは、原告らが業務を遂行するに当たってA社から受ける労働時間の管理に関する指揮監督の態様に基づいて判断されるべきであるとしました。

 そのうえで、本件添乗業務においては、指示書等によりA社から旅行管理に関する具体的な業務指示がなされ、原告らは、これに基づいて業務を遂行する義務を負い、携帯電話を所持して常時電源を入れておくよう求められて、旅行管理上重要な問題が発生したときには、A社に報告し、個別の指示を受ける仕組みが整えられており、実際に遂行した業務内容について、添乗日報に記載して提出し報告することが義務付けられていたことから、原告らの本件添乗業務にはA社の具体的な指揮監督が及んでいるとしました。

 そして、A社は、指示書等に記載された具体的な業務指示の内容を前提にして、実際に行われた旅程管理の状況についての添乗日報の記載を補充的に用いることにより、本件添乗業務についての添乗員の労働時間を把握するについて、その正確性と公正性を担保することが社会通念上困難であるとは認められないとして、本件添乗業務について、「労働時間を算定し難いとき」には当たらないとし、事業場外みなし制の適用を否定しました。

2 労働時間

 添乗員は、実作業に従事していない時間であっても、ツアー参加者から質問、要望等のあることが予想される状況下にある時間については対応できるようにしていることが労働契約上求められているとし、そのような時間については労働からの解放が保障されておらず、労働時間に含まれるとしました。

3 固定残業代

 被告会社は、原告らの日当に8時間の所定労働時間に対する賃金部分と3時間の所定時間外労働に対する割増賃金部分が含まれると主張しましたが、両者が明確に区分されているとはいえないとし、固定残業代性が否定されました。

4 休日労働

 休日労働については、被告会社がツアーごとにツアー期間を労働期間として原告らを雇用していることから、ツアー出発日を起算日とした7日間に休日が付与されたか否かを判断すべきとして、ツアー7日目及び14日目の労働が休日労働に該当するとしました。

※上告

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